熊野古道 中辺路は、和歌山県田辺市から熊野本宮大社へと続く、平安時代から「死と再生の地」「よみがえりの聖地」として信仰されてきた、世界遺産にも登録される巡礼路だ。この道は平安時代から1000年以上にわたって地域の人々によって維持されてきた。2004年にはユネスコ世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として登録され、今も国内外から多くの人々が訪れる。日本のロングトレイルのひとつとして見做されることもある。
深い杉木立と苔むした石畳が織りなす古道は、歩くごとに時代を遡るような感覚をもたらす。滝尻王子から熊野本宮大社までの約40kmが中辺路のハイライト。
滝尻〜熊野本宮大社 38km
Map of the route “熊野古道 中辺路 | 1000年続く巡礼の道を行く”: 37.92 km, 1,897 m of climbing and 1,885 m of descent, elevation between 77 m and 694 m. It starts at 33.77546, 135.50571 and ends at 33.84009, 135.77374 (latitude, longitude).
最高点の標高: 694 m
累積標高(上り): 1897 m
累積標高(下り): 1885 m
近露〜熊野本宮大社 27km
Map of the route “熊野古道 中辺路 | 1000年続く巡礼の道を行く”: 26.42 km, 1,199 m of climbing and 1,447 m of descent, elevation between 90 m and 669 m, time 05:47:03. It starts at 33.81237, 135.59479 and ends at 33.84014, 135.77373 (latitude, longitude).
最高点の標高: 670 m
累積標高(上り): 1199 m
累積標高(下り): 1447 m
コースデータ
| スタート | 滝尻王子(または近露や小広峠) |
| ゴール | 熊野本宮大社(または湯の峰温泉) |
| アクセス | 大阪→紀伊田辺駅→路線バス 東京→南紀白浜空港→紀伊田辺駅→路線バス |
| 主な補給ポイント | 道の駅 熊野古道中辺路 近露のスーパー(Aコープ) 三越峠関所跡(自販機のみ) 発心門王子以降は自販機が点在 |
| エスケープ | 国道などと並走する区間が多い 小広峠〜三越峠関所跡のみエスケープ困難 |
| 温泉 | 湯の峰温泉 / 川湯温泉 |
世界が認めた巡礼路
熊野古道がヨーロッパでも知名度がある理由のひとつは、スペインの名巡礼路「カミーノ・デ・サンティアゴ(サンティアゴ・デ・コンポステーラ)」と世界で唯一の姉妹巡礼路提携を結んでいることだ。この縁もあって欧米を中心とした外国人ハイカーが多く、英語情報も充実。英語対応可能な宿泊施設も点在している。

アクセス
大阪から
特急くろしお号で紀伊田辺駅まで約2時間。そこから路線バスで滝尻王子(登山口)へ向かう。
東京から
JAL便で南紀白浜空港へ飛び(約1時間15分)、空港からバスまたはタクシーで紀伊田辺駅へ。時間を優先するなら飛行機ルートが快適。
スタートとゴール
スタート地点:滝尻王子
中辺路の基本スタートは滝尻王子。急な登りで始まるが、古道らしい雰囲気はここから一気に高まる。体力や時間に応じて、近露(ちかつゆ)や小広峠からスタートする短縮ルートも選択可能。

ゴール:熊野本宮大社
ゴールの熊野本宮大社に参拝したら、旧社地大斎原(おおゆのはら)も必ず立ち寄りたい。日本最大の鳥居が田んぼの中に静かに立つ光景は、長い道のりの締めくくりにふさわしい。周辺に宿泊施設や飲食店あり。

コース攻略:区間別ポイント
コース全体を通じて非常によく整備されており、危険箇所はほぼない。区間によって性格が大きく異なる。
滝尻王子 → 近露
滝尻王子から少し進むと、「胎内くぐり」と呼ばれるスポットがある。岩の小さな隙間をくぐり抜けて、胎児がこの世に出てくるような感覚を味わえるとされている。出口が非常に狭く、体格の大きな人には難しい場合もある。

国道311号線がコースに並走しており、体調不良や悪天候の際はいつでもエスケープが可能。精神的な安心感が高いセクションだ。「道の駅 熊野古道中辺路」ではゆっくり休憩・食事ができる。


近露 → 小広峠
この区間も国道311号線がコースに並走している。殆どが舗装路となるが、野中の清水、継桜王子といったスポットが点在する。宿泊施設と中心部にスーパーあり。


小広峠 → 発心門王子
ここからはエスケープが困難で本格的な峠越えもあるので初心者には少し厳しい区間。三越峠関所跡は自動販売機と休憩所があるので、そこで休憩することを前提に進む。このセクションに入る前に、水と補給食を十分に確保しておくこと。



発心門王子 → 熊野本宮大社
ここからは人里エリアで舗装路が中心となり安心して歩くことができる。「蘇りの森」と呼ばれるセクションは何故か長く感じる。古道の雰囲気を存分に味わいながら、ゴールへ向かおう。

王子とは?
コース沿いには「王子」と名のついたスポットがいくつも点在している。「熊野権現の御子神(神の子供)を祀っていた神社」ということらしい。社がなく史跡となっている場所も多い。往時は参詣の途上で儀礼を行う場として機能していたとされる。
宿泊・補給
紀伊田辺駅周辺、近露エリア、熊野本宮大社に宿泊施設と売店が集中している。複数日にわたって踏破する場合は、近露に宿泊するのが良い。熊野本宮大社周辺の宿泊施設は多くないので、空室が無い場合は湯の峰温泉まで足を伸ばすか、バスで新宮駅に行くか紀伊田辺まで戻る。
準備とマナー
地図・GPSは必携
整備された道とはいえ、分岐点は多い。万一に備えて地図アプリやGPSデバイスは必ず持参しよう。
静粛への配慮
熊野古道を静かに歩く巡礼者・ハイカーが多い。走る場合、ハイカーを追い抜く際は声をかけ、スピードを落とすなど、場の雰囲気に配慮したい。
ゴール後の楽しみ
温泉
湯の峰温泉(日本最古の湯のひとつ)または川湯温泉への立ち寄りを強くおすすめする。どちらも熊野本宮大社からバスでアクセス可能。湯の峰温泉へは熊野本宮大社からの峠越えルートがある。


帰路
熊野本宮大社からはバスで新宮駅または紀伊田辺駅へ戻る。新宮からはJRで名古屋方面へ、飛行機利用なら紀伊田辺経由で白浜空港へ。
まとめ
首都圏からはかなり遠い。沖縄に行く時間とそんな変わらない。けれども行く価値はある。富士山は「日本人なら一度は登るべき」とよく言うが、熊野古道も同様。世界遺産にも登録されている1000年以上続く巡礼の道は、あなたの祖先も通った道かも知れない。
熊野本宮大社は「よみがえりの地」とも言われ、中辺路もそう呼ばれることもある。人生で新たなステージに入ろうとする人にとってはうってつけのルート。
この中辺路はいくつかある熊野古道のルートの中でも距離が程よく、計画を立てやすい。脚力・走力があれば1日で踏破可能なロングトレイルである。トレイルランで走るのも良いが、所々はゆっくりと歩き、世界遺産をしっかり味いたい。
このルートを踏破したら、次は小辺路や伊勢路を目指してみても良いと思う。


